カンヌでウオ子2007年05月31日 04時18分24秒

ウオ子ちゃんは真ん中です
 
なんとか酷暑のカンヌから帰ってまいりました。
今回、マイルでビジネスにしたんだが、帰りの成田便がとれず、ニース>フランクフルト>関空>羽田という、長旅に。結構疲れました。

写真は、スカパーの映画チャンネル、ムービープラスのレポーター、ウオ子ちゃんと、ライターのよしひろさんとの3ショット。ニューラインシネマの40周年記念&「ライラの冒険」PRパーティーでのヒトコマ。
http://www.movieplus.jp/original/feature/cannes2007/blog/index.html


会場はあのロートシルト(ロスチャイルド)家のカンヌ別荘ということで、お屋敷はさすがにゴージャスでした。でも庭しか入ってないけど。トイレだけでも屋敷に入り込んで行けばよかった。そっちには007ことダニエル・クレイグがいたらしい。尤も、トイレも簡易トイレがいろんなとこにあって、そちらに入っちゃったんだけどね。


ま、こう書くとなんだかセレブな感じですが、期間中、パーティーに行ったのは数えるほど。取材&試写&原稿書きの連続で、夕飯を食べ逃すことも多く、体力を消耗した2週間でした。


結果は皆さんもうご存知の通り。わりと下馬評どおりで、サプライズは少なかった。
パルムドールはコーエン兄弟の「No country for old men」(個人的にはこれが今年の最高作品)か、ルーマニアの若手監督ムンギウの「4ヶ月3週間と2日」のどちらかと誰もが感じており、後者が獲得。ここ数年、ベテラン勢のパルムが続いていたので、今年は若手にあげよう、という力も作用した気がする。

主演女優賞をとった「シークレット・サンシャイン」のチョン・ドヨンも文句なし。


(ここからねたばれのためご注意を)






「オアシス」のイ・チャンドン監督が撮った「シークレット・サンシャイン」(密陽)は、息子を失った母という題材が「殯の森」と被っていて、2時間半かけて地方の人間関係や宗教の不毛といった現実を延々と描いた分、カンヌでは叙情に訴えた「もがりの森」に作品としての軍配は上がってしまったようだが、「シークレット・サンシャイン」のほうを私は評価したい。ソン・ガンホの寅さんのような男もよかったし。結末はいえないが、彼の最後のほうの台詞に宗教、教会に対する監督の考えが示されて興味深い。


「もがりの森」の映像の美しさは特筆すべきものがあるし、日仏合作でかなり苦労したそうなのでので、グランプリよかったね、とは言ってあげたい。河瀬監督の今までの作品の中では一番だと思うし。
だが、どうしてもカンヌ向けに作った印象が否めないんだよね。茶畑を駆け抜ける痴呆老人の姿とか、映画祭受けのよい日本映画という感じ。世界を狙う上で悪いことではないのだろうが、戦略的なものを感じてしまった。ここが国際映画祭の難しいところなんだが。










(さらにここからは、読むのは、御自身の判断で)




ここからは本当に個人的な話だし、映画批評としての価値はまったくないが(しかし個人的な視点でしか、結局映画など見られないし語れなくもある)、去年、私の伯父とその長女である従姉が1週間の間に病気で死んだ。従姉は急死だった。伯母から見れば、夫と娘を一度に亡くしたのだ。
そういう体験をした人は他にも多くいるだろうし、正直、珍しいことじゃないと思う。そういう人たちは、あの映画を観たときに、喪失とか、喪の仕事とはこういうものではない、と思うのじゃないかな。


要するに「悲しいのはお前だけじゃない」ってことだ。半狂乱に泣くのは数日で、現実の日々を送りながら、たとえば死亡証明書を届けに行ったり、墓石を建てたり(私が伯母のために出来たのはそれくらいだ)、保険の手続きをしたり、日々の雑事をしながら、呆けたような時間が訪れてしまうんじゃないか。喪の仕事をテーマにするのなら、そのエアポケットに入り込んだときの感覚を丁寧に描いてほしいと思う。
ま、なにせうちは墓石屋だからさ。毎日が、喪の仕事なのよ。
ま、それを言っちゃあ、おしまいってか。

カンヌでサル2007年05月22日 23時46分24秒

もう報道されているでしょうが、こんなでかい垂れ幕が、カンヌの目抜き通りに出ています。




ご本人たちにも取材しましたが、WEB写真はNGなので、垂れ幕のみupということで。 生のお二人さん、めちゃかっこよかったですよ。
来年はゴローちゃんも来てほしいなあ。

しかしカンヌは暑い。暑すぎる。あと1週間も体がもつかわからん・・・。

60周年のカンヌ ラインアップ2007年05月04日 03時00分00秒

5月16日から開かれる、今年のカンヌ国際映画祭は、60回記念大会。
ということで、先日発表されたラインナップもかなり気合の入ったセレクション、のよう。実際見るまではわからないけど、少なくとも、監督の顔ぶれとしては錚々たるもの。

パルムドール(最高賞)を競う、コンペティション部門の22本はこちら。


1)ウォン・カーウァイ「My Blueberry Nights」 - 香港
(オープニング作品)
2)ファティ・アキン「On the Other Side」 - ドイツ
3)ジョエル&イーサン・コーエン「No Country for Old Men」 - 米国
4)デヴィッド・フィンチャー「Zodiac」- 米国
5)ジェームス・グレイ「We Own the Night」- 米国
6)河瀬直美「殯の森(もがりのもり)」 - 日本
7)エミール・クストリッツァ「Promise Me This」 - セルビア
8)イ・チャンドン 「Secret Sunshine」 (密陽)- 韓国
9)キム・ギドク「Breath」(息)- 韓国
10)クリスチャン・ムンギウ「4 Months 3 Weeks ans 2 Days」 - ルーマニア
11)ラファエル・ナジャリ「Tehilim」 - フランス
12)カルロス・レイガダス「Silent Light」 - メキシコ
13)Marjane Satrapi、Vincent Paronnaud 「Persepolis」 - イラン・フランス
14)Ulrich Seidl 「Import Export」 - オーストリア
15)アレクサンドル・ソクーロフ「Alexandra」- ロシア
16)クエンティン・タランティーノ「デス・プルーフ(Death Proof)」- 米国
17)ベラ・タール「The Man From London」 - ハンガリー
18)ガス・ヴァン・サント「Paranoid Park」- 米国
19)アンドレイ・ズビャギンツェフ 「The Banishment」 - ロシア
20)クリストフ・オノレ「Les Chansons d’our」 - フランス
21)カトリーヌ・ブレイヤ「Une Vieille Maitresse」- フランス
22)ジュリアン・シュナーベル 「The Diving Bell and the Butterfly」- フランス

去年、審査委員長を務めたウォン・カーウァイはオープニングを飾るだけでなく、さらに記念ポスターにも顔を出すという、かなりの特別待遇。初の英語作品だし、注目度はピカイチ。


この他に、『オーシャンズ13』(カンヌだよ!全員集合)、ウィンターボトムの『マイティハート』、マイケル・ムーアの『シッコ』が特別上映され、
スコセッシが、60周年記念の特別講演をする予定。
http://www.festival-cannes.com/index.php/en




ということで、今年もカンヌに行く予定。
でも希望のANAのフライトが取れず、キャンセル待ちだよ・・・おい。
スイスエアーでチューリヒ経由になりそう。

ごくろうさん!2007年04月30日 15時23分30秒

植木等さん、ありがとう、さよなら。
4月27日、青山葬儀所で行われた植木等さんのお別れの会に参列してきた。
正しくは、「植木等さん 夢をありがとう さよならの会」。

写真は、記帳をした際、御礼としていただいたカード。


こうしたスターのお別れ会に参列したのは初めて。私を含めた一般ファンは、会場外に設営されたテントで式の中継を見るという形式だったが、内田裕也のロック・スーダラ節には笑った。思い切り歌詞を忘れて、やり直すし、いまひとつリズム感ないし。植木さんは湿っぽいのは嫌いだろうから、という本人の意図以上に笑えました。
でも、歌う前に『笑わないで、笑ってください』と言った内田裕也の気持ちはよくわかる。よくわかったので、笑い泣きしてしまったぜ。
前座歌手として、クレージーキャッツと全国を回ったときの話もしていて、ちょっと裕也を尊敬しそうになった。


このあと紀尾井町の出版社で打ち合わせがあったので、最後までいられず残念だったのだが、会の締めくくりは、植木さんの「ごくろうさん!」の声だったそう。


会場には一人で行ったのだが、どうもファンの列の前方に元上司のTさんらしき人がいる。後ろ姿だけなので確証ないし、涙ぐんだりしてたのを見られると恥ずかしいので、そのまま声をかけずに帰ったのだが、駅で思い切り遭遇。しばらく立ち話をする。

私たちのいた会社(Tさんはまだ社員。リアルMr.Booとして知る人ぞ知る元宣伝マン)は映画会社とはいえ洋画配給なので、彼もあくまで一ファンとしてやってきたとのこと。Tさんは50代後半。彼らにとっての植木等は、本当にアイドルだったんだろうと思う。


私が物心ついた昭和43,4年頃はすでにクレージーキャッツは超大物だった。今でいうなら、クレージーがSMAPで、ドリフがTOKIOと嵐とKAT-TUN全部足したくらいか。微妙に違うんだが。実際、ドリフは浅草国際劇場で生公演を見たことがあるが、クレージーは生で見たことがない。
ちなみにその頃、日曜の夕方は、チャンネルはずっと4番固定だった。『笑点』→『プラチナ・ゴールデン・ショー』(フォーリーブスの番組)→『シャボン玉ホリデー』と続くんだもの、変えられるわけがない。


しかし、遅れてきたクレージー・ファンであるのに、どうしてこんなに思い入れがあるのかは一言では書けないが、個人的なことを言えば、子供の頃、父親が植木さんに似ていると言われるのが、とても嬉しかった。父と植木さんはほぼ同世代。当時、単身赴任でうちにあまりいなかったから、ちょっと怖い存在だったんだが、「植木等に似ている」(と実は私自身はあまり思ってなかった)と近所のオバサンとかに言われるとやっぱり嬉しかったのだ。


私は植木さんの突き抜けた、ドライな笑いが大好きなんだが、「おきあがりこぼし」というちょっとウェットなドラマも忘れられない。
植木さんはやもめのギタリストで、妻を亡くしたショックか、病気だったかでギターを弾けなくなるんだが、楽団仲間(もちろんクレージー)と子供の支えで復活する、という感じの人情喜劇。
今思えば、ダニー・ケイの音楽映画『五つの銅貨』のアレンジだったんだろう。ちなみにダニー・ケイは谷啓の名前の由来ね。


当時4歳くらいだった私は「やもめって何?」と親に聞いたのを覚えている。植木さんは『無責任男』シリーズでは父性のまったくない男を演じていたし、そこが大好きでもあり、時代を変えた理由の一つでもあると思うのだが、「おきあがりこぼし」は真逆で父性を感じさせるドラマだった・・・と思う。
何せ30年以上前の記憶で書いてますから。


今まで日本の芸能人の訃報を聞いて泣いたことはなかったが、
植木さんの訃報に激しく動揺してしまったのは、植木さん自身やその作品が大好きだったのはもちろん、やはり自分の父親が死ぬことの、疑似体験に近い感じだったからなのかなあ・・・、とちょっと冷静になってみると思えもする。要するに、昭和の終わり、ってことなのか。


ほんとに、ほんとに、植木さん、ごくろうさん、でした。

ハイそれまでョ2007年03月30日 05時20分46秒

ハイそれまでョ
今思えば、これって無常の歌だよなあ。


植木等さんは僧侶の息子。根が真面目なので「スーダラ節」を歌うのに抵抗があったが、父上が「わかっちゃいるけどやめられない、は親鸞の教えに通じる」と言われて吹っ切れた、というのは有名な話だけど、「ハイそれまでヨ」もまさに仏教の無常の教えだなと思う。

延命措置をとらないこと、密葬にすること、を生前言い残していたとのこと。かっこよすぎだ、植木さん。

もの心ついた頃から、C調で無責任で、かっこいい植木さんが大好きだった。

しんみりしたことを書くのは好きじゃないし、亡くなったショックで日記を書く気が起きなかったのだが(でも隅田川の桜を見ながら「タイミングにC調に無責任」って思わず歌ってしまった)
、今日追悼放映された「日本一のホラ吹き男」で大笑いしちゃったので、書くことにしました。

「ハイそれまでヨ」が流れる「ニッポン無責任時代」をやってほしかった気もするけど、これは我が家で週末にでも追悼上映することにします。
初期のクレージーの映画はかなり笑えるよ。でも小林信彦に言わせれば、植木さんの面白さは、1に舞台、2にテレビ、3が映画だったそうだ。
私の世代が、シャボン玉ホリデーを見られた最後の世代か。
それでも、後期しか見られなかったわけだが。

お会いしたこともないけれど、こんなに喪失感があるとは。
それだけ、笑わせてもらった、楽しませてもらった証拠なんだと思う。
不世出のエンターテイナー、植木等。無責任男は永遠だ!

若き日のディラン2007年03月20日 01時35分21秒

reign over me

ディランと言っても、ビバヒルじゃないし、
なだぎでもないぞ。
写真は新作「Reign over me」での
アダム・サンドラー。
白髪交じりの長髪にしたら、
ボブ・ディランにそっくりでびっくり!
そのうち、ディランの伝記映画にでも声がかかりそうだなあ。


「Reign over me」では911で家族を失くした男を演じる、
アダムが素晴らしいらしい。らしいらしい?


早く観たいけど、
「ウォーターボーイ」とか
オツムのちょっと弱い男を演じるアダムが
好きな私としては、少々複雑ではある。

希望的観測。2007年02月26日 01時44分11秒

Peter O'toole in Venus
いよいよ今日(日本時間の月曜朝10時)は、アカデミー賞授賞式。
ある雑誌にてアカデミー賞予想をしたので、ここにも書いてみます。去年は当てにいったのですが、今年はあくまで「とったらいいなあ」予想にしてみました。

以下、希望的観測。

作品賞:硫黄島からの手紙
監督賞:マーティン・スコセッシ(ディパーテッド)
主演男優賞:ピーター・オトゥール(Venus)
主演女優賞:ヘレン・ミレン (クイーン)
助演男優賞:アラン・アーキン(リトル・ミス・サンシャイン)
助演女優賞:ジェニファー・ハドソン(ドリームガールズ)




ただし、ブックメイカーにでも行って現実的に予想するなら、こんな感じ。

作品賞:バベル
主演男優:フォレスト・ウィテカー(ラストキング・オブ・スコットランド)
これ以外は同じ。

これまでの賞レースだと主演男優の本命はウィテカー。
ピーター・オトゥールは8度目の正直なので、
候補にするなら賞をあげないといかんだろうと思うんだが。
でも10年前もローレン・バコールを候補にしておいて、
伏兵のジュリエット・ビノシュがさらってしまったりと、
アカデミー会員数千人の投票なので、思わぬバイアスがかかったりしちゃうんだよね。
それでもオトゥールは大好きなので、ぜひともあげたい。
先日読んだインタビューも実に面白かった。
これぞ本物の役者だな、と思わされるよ。
http://www.msnbc.msn.com/id/16840017/site/newsweek/
(たぶん日本版ニューズウィークにも転載されると思う)

74歳、大酒のみで2度離婚暦あり。独身が一番いいらしい。
ただしかなり老けてみえるけど、実はイーストウッドより2歳も年下だから、9度目の正直がないわけじゃないけどね。

スコセッシは、ここらで何かあげないといけない、と
アカデミー会員も思ってるはずだが、やっぱり作品賞はおあずけで、監督賞になると予想。
次回作は、遠藤周作の『沈黙』なので、こっちで本気を見せてほしい。

作品賞は、出来は「硫黄島からの手紙」が上だけど、
アカデミー会員が字幕つき映画をどこまで見ているか疑問なので、混戦の今年は無難に「バベル」に行っちゃいそうだなあ。
誰も否定できないタイプの映画なので。
無難とは書きましたが、映画そのものはいい映画ですよ。

エディ・マーフィは助演賞有力と言われてるけど人望がないので、ベテランのアーキンが取ると思う。こちらは72歳。
この人は「暗くなるまで待って」や「摩天楼を夢みて」、「シザーハンズ」など、長いこと脇役としていい仕事をしてきてる。真の意味で助演男優なんだよね。 マーフィのように普段主演の人が、たまたま助演をやってこの賞をさらってしまうことがままあるけど、本来はアーキンのような人にこそあげるべき賞だと思う。

さて、結果はいかに。

感傷的な冒険・・・?2006年12月30日 01時15分03秒

以前の日記に書いた、クリント・イーストウッドの隠れた傑作『センチメンタル・アドベンチャー』が、今夜2時30分からフジテレビで放映されます。『硫黄島からの手紙』を見た人、もしくはこれから見る予定のある人には、ぜひ見ることをお勧め。無理にとは言いませんが。

パンフにも書いたけど、この映画でのイーストウッドの登場の仕方や、甥(演じてるのは実の息子カイル・イーストウッド)との擬似親子の関係が、『硫黄島からの手紙』と相似形をなしていて、興味深いです。
ま、なんだかんだ言っても、単純に一番好きなイーストウッド映画なんだ。て、『セロリ』かよ。

それにしても、すごい邦題だよなあ。
原題は Honkytonk Man.
安酒場で歌う流しのカントリー歌手のことで、イーストウッドがそんなに上手じゃないけど、味のある声を聞かせます。
切ない話ではあるが、基調としてはコミカルなロードムービーなので、年末の深夜映画としててもいいチョイス。

ということで、年賀状作りに取りかかろう。

怪物ふたり2006年11月14日 02時37分00秒

『硫黄島からの手紙』を観た。
もう年内、何も観なくてもいいかと思うほど。
何年も贖罪の映画を撮り続けてきたイーストウッドだが、
贖罪を描きながらも次の段階にいってしまった。

こんな映画を撮れるイーストウッドは怪物だ。
そして、二宮和也も怪物だ。ずっと見てきたし、少し前に取材をしてたのでもちろん期待はしてたが、想像以上。怪物というか、もう化け物並み。たいした役者です。
76歳と23歳の怪物に、のみこまれちゃう感じ。

この映画について長めの文章を書くことになっているのだが、何を語っても自分の小ささが露呈するなあ。まあ、元々小さいから、いいけどね。

胸開けビョンホン2006年10月21日 17時13分21秒

ビョンホンとスエ

こちらは、映画祭開幕式でのイ・ビョンホンとスエの『夏物語』コンビ。
胸ボタン3つくらい開けて、どこぞのチョイワル風ですが、決まってますな。