60周年のカンヌ ラインアップ2007年05月04日 03時00分00秒

5月16日から開かれる、今年のカンヌ国際映画祭は、60回記念大会。
ということで、先日発表されたラインナップもかなり気合の入ったセレクション、のよう。実際見るまではわからないけど、少なくとも、監督の顔ぶれとしては錚々たるもの。

パルムドール(最高賞)を競う、コンペティション部門の22本はこちら。


1)ウォン・カーウァイ「My Blueberry Nights」 - 香港
(オープニング作品)
2)ファティ・アキン「On the Other Side」 - ドイツ
3)ジョエル&イーサン・コーエン「No Country for Old Men」 - 米国
4)デヴィッド・フィンチャー「Zodiac」- 米国
5)ジェームス・グレイ「We Own the Night」- 米国
6)河瀬直美「殯の森(もがりのもり)」 - 日本
7)エミール・クストリッツァ「Promise Me This」 - セルビア
8)イ・チャンドン 「Secret Sunshine」 (密陽)- 韓国
9)キム・ギドク「Breath」(息)- 韓国
10)クリスチャン・ムンギウ「4 Months 3 Weeks ans 2 Days」 - ルーマニア
11)ラファエル・ナジャリ「Tehilim」 - フランス
12)カルロス・レイガダス「Silent Light」 - メキシコ
13)Marjane Satrapi、Vincent Paronnaud 「Persepolis」 - イラン・フランス
14)Ulrich Seidl 「Import Export」 - オーストリア
15)アレクサンドル・ソクーロフ「Alexandra」- ロシア
16)クエンティン・タランティーノ「デス・プルーフ(Death Proof)」- 米国
17)ベラ・タール「The Man From London」 - ハンガリー
18)ガス・ヴァン・サント「Paranoid Park」- 米国
19)アンドレイ・ズビャギンツェフ 「The Banishment」 - ロシア
20)クリストフ・オノレ「Les Chansons d’our」 - フランス
21)カトリーヌ・ブレイヤ「Une Vieille Maitresse」- フランス
22)ジュリアン・シュナーベル 「The Diving Bell and the Butterfly」- フランス

去年、審査委員長を務めたウォン・カーウァイはオープニングを飾るだけでなく、さらに記念ポスターにも顔を出すという、かなりの特別待遇。初の英語作品だし、注目度はピカイチ。


この他に、『オーシャンズ13』(カンヌだよ!全員集合)、ウィンターボトムの『マイティハート』、マイケル・ムーアの『シッコ』が特別上映され、
スコセッシが、60周年記念の特別講演をする予定。
http://www.festival-cannes.com/index.php/en




ということで、今年もカンヌに行く予定。
でも希望のANAのフライトが取れず、キャンセル待ちだよ・・・おい。
スイスエアーでチューリヒ経由になりそう。

GWに1本だけ2007年05月05日 17時15分05秒

ラブソングができるまで
映画を観に行くとしたら、
ずばり「ラブソングができるまで」をおすすめしたい。
誰にも尋ねられてないけどさ。
80年代半ばに青春を送った、30代以上の貴兄、貴女なら、GW最後の一日が盛り上がること間違いなし!

まあ、私がパンフに『君だけに語ろう、僕のすべてを』と題して衝撃の過去を激白してるから、というだけではなく、冒頭丸々流れる、ヒュー・グラントが所属したという設定の80年代のニューロマンティック系バンド「POP!」のプロモビデオが、実によくできてるのだ。

ファッションはもちろん、市松模様のバックとか、歌謡ドラマ仕立てとか、デュランデュランや、ワム!、スパンダー・バレエの当時のビデオを見事に再現していて、まるで「ベストヒットUSA」の「タイムマシーン」コーナーを見ているかのよう。ここだけスティーブ・バロン演出かと思ったよ。
この勢いでPOP!のワールドツアーのモキュメンタリーも作ってくれないかなあ。これがDVDに入ってたら、絶対売れると思うんだけど。


軽薄なようで耳に残る、キャッチーな曲を書いたのは、ファウンテン・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャー。「pop goes my heart」という曲名にちゃんと『恋は突然』って邦題がつけられているのも、80年代らしさ全開。『僕はこんなに』とか『グラビアの美少女』とか『君は完璧さ』とか、いろいろ思い出しちゃうね。

映画もヒュー・グラントのリアクション演技がたっぷり楽しめる、ラブコメの王道をいく上々の出来です。



あ、ちなみにヒュー・グラントはバンド出身ではないし、私がパンフに書いた原稿の本当のタイトルは『歴史はムダなパワーで作られる』というタイトルです。念のため。

カンヌでサル2007年05月22日 23時46分24秒

もう報道されているでしょうが、こんなでかい垂れ幕が、カンヌの目抜き通りに出ています。




ご本人たちにも取材しましたが、WEB写真はNGなので、垂れ幕のみupということで。 生のお二人さん、めちゃかっこよかったですよ。
来年はゴローちゃんも来てほしいなあ。

しかしカンヌは暑い。暑すぎる。あと1週間も体がもつかわからん・・・。

カンヌでウオ子2007年05月31日 04時18分24秒

ウオ子ちゃんは真ん中です
 
なんとか酷暑のカンヌから帰ってまいりました。
今回、マイルでビジネスにしたんだが、帰りの成田便がとれず、ニース>フランクフルト>関空>羽田という、長旅に。結構疲れました。

写真は、スカパーの映画チャンネル、ムービープラスのレポーター、ウオ子ちゃんと、ライターのよしひろさんとの3ショット。ニューラインシネマの40周年記念&「ライラの冒険」PRパーティーでのヒトコマ。
http://www.movieplus.jp/original/feature/cannes2007/blog/index.html


会場はあのロートシルト(ロスチャイルド)家のカンヌ別荘ということで、お屋敷はさすがにゴージャスでした。でも庭しか入ってないけど。トイレだけでも屋敷に入り込んで行けばよかった。そっちには007ことダニエル・クレイグがいたらしい。尤も、トイレも簡易トイレがいろんなとこにあって、そちらに入っちゃったんだけどね。


ま、こう書くとなんだかセレブな感じですが、期間中、パーティーに行ったのは数えるほど。取材&試写&原稿書きの連続で、夕飯を食べ逃すことも多く、体力を消耗した2週間でした。


結果は皆さんもうご存知の通り。わりと下馬評どおりで、サプライズは少なかった。
パルムドールはコーエン兄弟の「No country for old men」(個人的にはこれが今年の最高作品)か、ルーマニアの若手監督ムンギウの「4ヶ月3週間と2日」のどちらかと誰もが感じており、後者が獲得。ここ数年、ベテラン勢のパルムが続いていたので、今年は若手にあげよう、という力も作用した気がする。

主演女優賞をとった「シークレット・サンシャイン」のチョン・ドヨンも文句なし。


(ここからねたばれのためご注意を)






「オアシス」のイ・チャンドン監督が撮った「シークレット・サンシャイン」(密陽)は、息子を失った母という題材が「殯の森」と被っていて、2時間半かけて地方の人間関係や宗教の不毛といった現実を延々と描いた分、カンヌでは叙情に訴えた「もがりの森」に作品としての軍配は上がってしまったようだが、「シークレット・サンシャイン」のほうを私は評価したい。ソン・ガンホの寅さんのような男もよかったし。結末はいえないが、彼の最後のほうの台詞に宗教、教会に対する監督の考えが示されて興味深い。


「もがりの森」の映像の美しさは特筆すべきものがあるし、日仏合作でかなり苦労したそうなのでので、グランプリよかったね、とは言ってあげたい。河瀬監督の今までの作品の中では一番だと思うし。
だが、どうしてもカンヌ向けに作った印象が否めないんだよね。茶畑を駆け抜ける痴呆老人の姿とか、映画祭受けのよい日本映画という感じ。世界を狙う上で悪いことではないのだろうが、戦略的なものを感じてしまった。ここが国際映画祭の難しいところなんだが。










(さらにここからは、読むのは、御自身の判断で)




ここからは本当に個人的な話だし、映画批評としての価値はまったくないが(しかし個人的な視点でしか、結局映画など見られないし語れなくもある)、去年、私の伯父とその長女である従姉が1週間の間に病気で死んだ。従姉は急死だった。伯母から見れば、夫と娘を一度に亡くしたのだ。
そういう体験をした人は他にも多くいるだろうし、正直、珍しいことじゃないと思う。そういう人たちは、あの映画を観たときに、喪失とか、喪の仕事とはこういうものではない、と思うのじゃないかな。


要するに「悲しいのはお前だけじゃない」ってことだ。半狂乱に泣くのは数日で、現実の日々を送りながら、たとえば死亡証明書を届けに行ったり、墓石を建てたり(私が伯母のために出来たのはそれくらいだ)、保険の手続きをしたり、日々の雑事をしながら、呆けたような時間が訪れてしまうんじゃないか。喪の仕事をテーマにするのなら、そのエアポケットに入り込んだときの感覚を丁寧に描いてほしいと思う。
ま、なにせうちは墓石屋だからさ。毎日が、喪の仕事なのよ。
ま、それを言っちゃあ、おしまいってか。